「週刊現代」2015年5月23日号掲載 本誌編集次長 近藤大介

どんなに忠誠を誓っている部下でも、些細なミスを犯せば直ちに処刑する—父親の金正日時代には考えられなかったことだ。金正日総書記は、部下がミスを犯した際には、一度ドン底に突き落として「再教育」し、その後、再起用して一層、忠誠心を高めるという統治手法を取っていた。

ところが金正恩第一書記は、部下たちの小さな失点を許さないばかりか、自分の指示がどれほど荒唐無稽であっても、逆らう者は即刻、粛清だ。

この記事は、平壌駐在の外交官や韓国の国情院関係者の言葉を引用し、馬園春国防委員会設計局長、国家計画委員会副委員長、国家計画委員会副委員長が金正恩の逆鱗に触れ、その場で逮捕された後、処刑されたと伝えている。

週刊誌によくある匿名の証言なので、その程度に読めばいいのだが、日本のテレビ、新聞までも北朝鮮で粛清、処刑の嵐が吹き荒れていると報道しているから気になる。
北朝鮮関係筋や国情院関係者の話と前置きしているが、何ら確証もチェックもなく報じるところが、無法地帯と化した北朝鮮報道の現住所だ。怪しい情報筋だけを頼りに記事を書ける無神経さがw

じゃあ、お前は何か証拠を持っているのか?

馬園春国防委員会設計局長が「再教育」を受けていることは確認している。生きている。

「馬園春は、金正恩が直接指導した元山郊外の馬息嶺スキー場や、平壌の紋繡遊泳場などの設計者でした。これらの功労として、朝鮮労働党副部長及び朝鮮人民軍中将に抜擢され、金正恩に最も寵愛を受ける側近として知られていたのです。

その馬園春が新たに設計した、順安空港(平壌国際空港)の新庁舎を視察した金正恩は、

『なぜ中国の真似事のような内装の空港を作ったのだ!』

と激昂。この一言で馬園春は引っ捕らえられ粛清されたのです」(同前)

再教育は朝鮮労働党の管理下で実施される。一党独裁なのですべてが党の下で行われるから当然ではある。

ちなみに、工場の幹部が支配人(経営・営業)、技師長(生産・開発)、党書記(人事・総務)に分権されていて、軍も同様に(例えば中隊なら)中隊長、参謀、政治委員に分権されてる。

馬園春(マ・ウォンチュン)は、平壌の政府庁舎が集まる地区に普通に出勤している。自宅から通いで勤務している。金正恩に同行する要職からは外されているが、職務は遂行している。

北朝鮮では、指導者の現地指導に度々同行していた幹部がある時から呼ばれなくなるということはよくある。張成沢処刑以降、これが粛清→処刑と伝えられるようになっただけで、韓国国情院が粛清→処刑と数えてる幹部の数はまったく根拠がない。

実際、粛清、処刑とされた幹部や要人が数年後にひょっこり現れることがよくある。玄永哲の処刑説もまったく根拠がない。

こうして書くと、北朝鮮の肩を持っているように批判されるが、北朝鮮情報はそのほとんどが中国国境地帯で活動する中国、北朝鮮の官僚、貿易関係者、その他の外交官の憶測、国情院とブローカーによるデマにすぎないので、その情報を鵜呑みにしていては、まともな政策を立てられないと警告したい思いなので、反日、スパイといった誹謗中傷のメッセージを送らないでいただきたい。