ここ数カ月、北朝鮮の外交問題ばかりを取り上げてきたので、たまには国内の経済事情を取り上げよう。

北朝鮮経済発展のカギは電力にある。

首都平壌でも停電は日常茶飯事で、いつでも電気が来る住宅などは皆無に近い状態。「市民が米ドルをこよなく愛しているのに何が米帝打倒だ」という矛盾と同様、「家庭に電気が来ないのに何が強盛国家だ」と現地で言ったら嫌われるので要注意。

北朝鮮は国内1000万kwの発電能力を目標に掲げている。

国内の実質総発電力=一度に発電できる電力の合計は、過去最高値が1980年代後半に記録した800万kwほど、現状は多くて700万kw程度だと言われている。90年代から2000年代初頭に著しく低下したが、発送電システムの改善と水力発電所の建設、自然エネルギー発電の導入により、回復してきた。

最近、平壌の電力事情が改善しつつあるという。今まで、「一日に1、2時間」しか電気がこなかった地域に24時間電気が通っていたり、とにかく市内のアパートが明るいのだと言う。

噂好きの平壌市民は、「中国への石炭輸出を控えて国内に回しているから」とか「ロシアから電気を送ってもらっているから」とか未確認情報に関心を寄せている。

本当のところはどうなのか? 


プラスの要因としては

・発送電システムの改善
・各地で水力発電所の建設
・自然エネルギーによる発電の導入

などがある。

一方、マイナス要因として

・火力発電所の設備の老朽化、故障
・国産タービンが低品質

といったものがある。

とくに火力発電所の場合、経済制裁により外国産の設備を更新できず、修理もままならず、発電能力が低下する一方だ。

それを水力発電により補おうとしても、天候に大きく左右されるため、安定して1000万kwを備えることはできない。

CDM(Clean Development Mechanism)により、チェコなどの電力会社の支援で、停滞していた大規模水力発電所が稼働し始めたが、地方の工場を回すのに手いっぱいで、電力事情を改善するのに決定的ではない。

さて、こうした場合、人々は何に頼るだろうか。

はい。原子力です。

北朝鮮には実験レベルの原子炉があるが、5000kwと小規模で、プルトニウム抽出に用いられてはいるが、発電においては実用的ではない。

「1000万kw」を支えるのは軽水炉建設プランだ。

北朝鮮の内閣の官僚や電力工業省の官僚の説明によると、北朝鮮の東海岸に100万kw×二基の軽水炉がすでに建設済みだという。最終的な安全稼働のためのテスト段階にあるという。

はて、北朝鮮を宇宙から監視しているが、それらしい建物はみつからない。山の中に隠しているのか?隠せるものなのか?そもそもはったりなのか?

これ以上の事実確認はできないが、一つ参考になる情報を。

米国は北朝鮮に石炭ガス化複合発電(Integrated coal Gasification Combined Cycle, IGCC)の技術提供を民間企業を通じて行っている。

石炭ガス化の技術は製鉄製鋼、化学薬品、化学肥料など工業各分野で利用される。

制裁一辺倒の日本と違い、米国は常に、表では敵対しながらも、紛争が終わった後に乗り込むために甘い汁も同時に吸わせているのだ。

核武装した北朝鮮と一戦を交えることは不可能。それなら豊富な地下資源、社会主義制度特有の人的資源を利用しない手はない。

米国のみならず、ロシア、中国、ユーロはしたたかに、北朝鮮への科学技術支援をしている。

そんな状況にあるので、事実無根の軍事挑発を黒にしてしまう米国が、あるはずの軽水炉を伏せておくなど、たやすいこと。

スタジオ都市平壌を目くらましにし、東海岸の主要都市を一気に開発している北朝鮮。軽水炉が稼働すればさらに経済建設に拍車がかかる。

軍隊創設、米国からの独立、自主防衛に余念がない日本は、このまま制裁一辺倒を続けていては、過去に植民地として開発した北朝鮮に対する経済的アドバンテージを失うことになる。

衰退する米国との付き合いを改め、日本軍創設、核武装、中国・北朝鮮との関係強化という流れを作る方が良いのではと思いが募る。