「金正恩の暴走を…」「金正恩を締め上げて…」

「トランプ大統領が来られて…」「トランプ大統領にお会いいただいて…」

同じ人物がコメントの中で発した言葉なのだが、評論家がテレビで発する言葉としては不適切だ。

崇米事大、つまりアメリカの犬にしか見えない。

トランプ大統領のアジア歴訪は、米国が北朝鮮に対して軍事オプションを選択した場合の対応策などを話し合うものでもはない。

まったくその逆で、米国が北朝鮮と対話を開始することを同盟国に通達し、その対応策を考えるよう求める内容だ。

米国が正義で北朝鮮が悪という色眼鏡でしか物事を見れないから、本当の姿が見えない。

すでにトランプ大統領は米朝首脳会談を見据えた事前協議の準備を進めるように指示しており、実際に実務者会談が北欧で開かれる予定だった。

しかし、またも米国が合同軍事演習を実施したことで、北朝鮮が会談をキャンセル。実現に至らなかった。

トランプ大統領も歴代大統領らと同様に、北朝鮮が核放棄の意思を示したら、具体的な行動をしたら米朝会談をやってもいいと主張してきたが、北朝鮮のICBM実験、核実験の圧力により、米国の安全保障政策は破綻。無条件での米朝会談をせざるをえなくなった。

ティラーソン国務長官の10月15日の発言を見れば事態がわかる。

「トランプ大統領は北朝鮮に対する行動を開始しようとしている。大統領は戦争を追求しようとしているのではない。大統領は外交的な解決を求めていることを私にはっきりと示した。そうした外交努力は最初の爆弾が落ちるまで続くだろう」

これは軍事行動を決断したとか、期限を区切ったとか、そういう発言ではない。

文字通り、最後まで外交的に、対話で解決することを明確に示したものだ。

無知と偏見によって本質を逆さにしか読めない日本のメディアのミスリードには注意が必要だ。

口だけの圧力一辺倒の安倍政権は、トランプ大統領と北朝鮮に対する圧力強化で一致した、結束を強めたとアピールしているが、そんなことのためにわざわざ首脳会談を開く意味はない。

初めから日本のメディアは見誤っている。

-トランプ大統領が今回のアジア歴訪を北朝鮮問題解決の大きなきっかけにしたいと述べたこと、

-実現に至らなかったが、米朝実務者会談が予定されていたこと、そしてそれが米国側が無条件での会談を提案したから組まれたこと、

-米国側が無条件の会談を提案したから北朝鮮は軍事的挑発をやめたこと、

こうした事実から明らかなことは、トランプ大統領は同盟国、日本と韓国に対して、米国が北朝鮮と対話を開始することを通達したことだ。

米朝融和=在韓米軍撤退が連動している韓国は、米朝の接近に敏感だが、日本が不感症。対応策をどうたてているのだろうか。

米朝が融和に向かった場合、日本は北朝鮮とどう付き合うのか、制裁の行きつく先はどこなのか、拉致問題の解決はどうなるのか、いろいろな疑問が浮かぶが、何も糸口が見えない。

日本は拉致問題があるからと、北朝鮮との対話を拒否することもできるが、北朝鮮を取り巻くアジアの政治経済が進展した場合、対中国、対韓国、対ロシアともさまざまな問題を抱える日本は東アジアで逆に孤立しかねない。

安倍政権はこうした緊張を演出し、憲法改定、国防軍創設、核武装へと歩みを進めるかもしれない。

こうした展望がトランプ=安倍の間で語られていることをメディアは認めようとしない。